2024-10-29
「現状渡しってなに?」「土地や建物を高く売るには?」と疑問を持つ方は多いです。
本来であれば、壁のヒビや設備不良は、売主が修繕工事をしてから買主に渡しますが、築年数や物件状態によっては、条件付きで修繕せずに引き渡しをするケースもあります。
本記事では、不動産売却における現状渡しとはなにかをお伝えしたうえで、メリットとデメリットを解説します。
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現状渡しとは、壁のヒビや設備の故障など、明確に瑕疵(かし)を抱えている物件を補修・修理せずに、そのままの状態で買主に引き渡す方法です。
土地や建物のような数千万円規模の財産を売買する場合、物理的な破損は修復したり、補修したりしてから引き渡す必要があります。
たとえば、壁にヒビが入っている、壁紙が剥がれている、給湯器が壊れて水しか出ない、浴槽の一部が破損して欠けている、雨漏りして腐敗しているなどの状態です。
一般的に、物理的瑕疵を抱えている物件は購入希望者が現れず、売れにくいとされています。
中古物件を購入しようと考える買主は、立地や間取りの条件を絞り、複数の物件から条件を比較しながら取捨選択し、最終的には内見を経て1つに絞るのが一般的です。
あまりにも物理的瑕疵が目立つ物件は、他の類似物件との比較で不利になったり、実際に物件を見たときに購買意欲が削がれることが多いです。
条件がほとんど同じであれば、破損している箇所が少なくてきれいな物件を選ぶのは当然といえるでしょう。
効率よく土地や建物を売るためには、メリットの多さよりもデメリットの少なさが購入希望者に好まれる傾向があるため、この点を理解した上で準備を進めるべきです。
ただし、補修・修理をしてから売却する場合、販売活動を始めるまでに時間がかかることがあります。
そこで、できるだけ早く現金化したい方や、築年数が古すぎて物理的な補修をしただけで購入希望者が見つかるか不明な方は、工事費用をかけずに売却したいと考えるでしょう。
すでにお伝えしたとおり、買主は複数の物件を比較し、優れた条件を満たしている物件を選ぶ傾向があるため、物理的瑕疵のある状態では売れにくいです。
そのため、類似物件に対して大幅値下げをするなど、買主が魅力を感じる条件を加える必要があります。
また、不動産売買では、買主と売主双方の合意が必要であり、基本的には売買契約書を作成して内容の確認をおこなうことが求められます。
売買契約書には、物件の物理的瑕疵に関する記載が必要で、これを怠ると、買主が物件の状態を正しく把握せずに契約を結ぶ可能性があり、あとから契約不適合責任を問われるリスクがあるでしょう。
民法では、高額な買い物をする買主を保護するために告知義務が設けられています。
現状渡しをおこなう場合、物理的瑕疵に関する情報をすべて売買契約書に記載し、「引き渡し後に不具合が起きても売主は契約不適合責任を負わない」とする条項を入れておくと安心です。
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現状渡しを選択する売主側のメリットは、コストを削減できる点と早期売却が実現する点です。
一般的に中古物件を売却する場合、物件の状態に応じて修繕・補修などの工事費用が発生します。
築年数が古く、足場を立てて補修が必要な大規模工事や、高価な設備が故障している場合、工事費用は数百万円単位になる可能性もあります。
基本的には売買代金の内訳に工事費用が含まれるため、販売価格に対して購入希望者が現れれば、最終的には費用回収が可能です。
しかし、スムーズに購入希望者が見つからない場合は値下げを検討せざるを得ず、その結果として費用回収ができないリスクも伴います。
とくに工事費用が高く、不動産市場を上回る価格で販売しなければ赤字になる状況では、購入希望者が見つからずに売れ残る可能性が高まります。
その点で現状渡しは、補修や修繕の工事費用をかけずに売却できるため、最終的に費用回収できるかどうかを心配する必要がありません。
現状渡しをするべきか悩んでいる方は、「修繕する必要があるのか?」「工事にいくらまでかけられるのか?」を考慮したうえで判断してください。
補修やリフォームをおこなう場合、販売活動に入るまでに時間がかかります。
業者探しや見積もりをもとに業者選び、スケジュール調整、工事などの工程が必要ですが、繁忙期に依頼すると数か月待たなければならない可能性もあります。
工事をおこなう前に土地や建物の査定依頼はできますが、評価基準が変わったり、ポータルサイトに掲載できる最新の写真が用意できなかったりするため、販売活動は始められません。
その点で現状渡しを選択すれば、見た目に問題があるとしても「家を売りたい」と思い立ったらすぐに仲介業者に連絡し、査定・媒介契約を経て販売活動に進むことができます。
できるだけ早く現金化したい方や転職などで早急に買主を見つけたい方には、現状渡しが向いています。
一方、現状渡しをする買主側のメリットは、安価に物件を購入できる点です。
物理的瑕疵を抱えている物件は、状態に応じて類似物件の相場よりも安く売りに出される傾向が強いです。
そのため、できるだけ安く土地と物件を購入し、自由にリフォームしたい方にとっては、中途半端に修繕や補修されている物件よりも条件が良い可能性があります。
なお、仲介業者が直接販売活動をおこなう業者買取による取引では、原則として契約不適合責任は免責されるため、特約をよく読み込んだうえで契約を検討することが重要です。
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現状渡しを選択する売主側のデメリットは、売買契約書に不備があると引き渡し後に契約不適合責任を問われる可能性がある点と、売却価格が安くなる点です。
まず、物理的瑕疵がある物件に対しては、すべての状況を正確に買主に伝えなければなりません。
申告漏れが発覚すると、引き渡し後に買主から売主に対して損害賠償請求されるだけでなく、最悪の場合、売買契約が取り消しになる可能性もあります。
物理的瑕疵の基準は明確ではないため、些細な部分も必ず申告し、売買契約書に記載してもらったうえで、責任問題を問わない条項を締結することが重要です。
次に、物理的瑕疵を抱えたままの物件は、類似物件と比べて購買意欲が低下するため、売り出し価格を安く設定せざるを得ません。
購入希望者を見つけるためには、相場価格を下回る金額を設定する必要がある可能性もあるため、あらかじめ理解しておくことが重要です。
一方、現状渡しをする買主側のデメリットは、物件の状態によっては新生活を始める前から、高額な工事費が発生する可能性がある点です。
大規模リフォームを前提で購入する場合は問題ありませんが、引き渡し後すぐに工事をする予定がない場合は、将来的な工事計画の目安を立てておく必要があります。
物件の状態によっては、10年以内に数百万円規模の修繕が必要になることもあるでしょう。
専門家による客観的な物件状態の調査(インスペクション)を実施することで、見えない部分の物件状態も把握できるため、将来的な工事を含めて購入の判断がしやすくなります。
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不動産売却では、補修やリフォームをせずに、そのままの状態で取引する現状渡しと呼ばれる手法で売買契約が成立するケースがあります。
売主としては、工事費用を気にせず思い立ったらすぐに販売活動ができますが、相場以下の取引になる可能性があるので理解しておきましょう。
買主は低価格で物件が購入できますが、リフォームや修繕費の負担があるので、インスペクションを有効活用して将来的な手直し計画を立てておくと安心です。