2024-11-26
過去に敷地内で事件や事故が発生した不動産を売却するときは、心理的瑕疵に注意が必要です。
本記事では、心理的瑕疵とはなにか、不動産の売却価格に与える影響や売主の告知義務について解説します。
不動産の売却を検討中の方は、ぜひ参考になさってください。
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心理的瑕疵(しんりてきかし)とは、不動産を売却する際に物理的な欠陥は存在しないものの、将来の居住者が心理的な抵抗を感じる可能性があることを指します。
たとえば、自殺や火災、重大な事故があった場合など、物件の過去に発生した出来事に起因することが多いです。
物理的瑕疵とは異なり、心理的瑕疵は物件の構造や機能に影響を与えるものではありません。
しかし、特定の買主にとっては、購入の決断を躊躇させる要因となります。
さらに、瑕疵が物理的であれ心理的であれ、不動産を売却する際には、これらの重要な情報を開示する法的義務があります。
告知義務を怠ると、将来的に法的な責任を問われる原因ともなり得るため、売主は注意が必要です。
心理的瑕疵は、物件の使用に物理的な問題がないにも関わらず、過去の出来事等により潜在的な購入者が抵抗感を持つ可能性がある場合に認められます。
心理的瑕疵の判断基準は、一般的な感じ方に基づくもので、個人による感じ方の違いが大きいため、厳密な基準は存在しません。
しかし、具体例を知っておくことは、売却活動において有用です。
心理的瑕疵の具体例は、以下のとおりです。
過去に自殺や殺人といった人の死に直結する出来事があったいわゆる事故物件は、一般的に敬遠される傾向にあります。
自然死や高齢者の病死などは一般に事故物件には含まれないことが多いです。
ただし、死亡後の発見が遅れ、特殊清掃がおこなわれたケースも心理的瑕疵に含まれることがあります。
また、物件自体には問題がなくても、その立地が刑務所や火葬場などの施設の近くである場合は、心理的瑕疵に該当します。
悪臭や騒音がひどいなど、日常生活に支障をきたす環境の場合も、心理的瑕疵物件とみなされることが多いです。
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居住用の不動産は、家族の生活空間としての価値が前提にあるため、売買時には心理的瑕疵の存在が売却価格に大きく影響する可能性があります。
心理的瑕疵のある物件は一般的な物件と比較して売却価格が下がる傾向にあります。
具体的には、心理的瑕疵物件の売却価格は通常の市場価格の50%から90%の範囲で設定されることが一般的です。
この価格設定は、心理的な抵抗を覚える可能性がある購入者にとっての不利益を相殺するための措置としておこなわれます。
つまり、心理的瑕疵のある物件を市場で売却する際には、価格を適切に調整することが、物件を売りやすくする重要な要素です。
心理的瑕疵物件は、過去の出来事によって購入希望者の心理的な抵抗を引き起こすため、売却価格や購入意欲に影響を与える可能性があります。
しかし、心理的瑕疵の具体的な内容によって、その影響は大きく異なるため、売却価格を決定する際には、個別の状況を考慮した慎重な判断が求められます。
たとえば、自殺や他殺などの事件が発生した物件の場合、一般的に購入者の抵抗感が強くなるため、売却価格の大幅な値下げが必要となるでしょう。
一方で、孤独死や自然死が発生した場合は、事件性がないため、価格の下落幅は比較的小さいことが多いです。
とくに、早期に発見された孤独死や、室内が清潔に保たれている場合は、価格を大きく下げずに売却できる可能性もあります。
また、心理的瑕疵の影響は、時間の経過によって薄まることもあります。
したがって、不動産を売却する際には、心理的瑕疵のある物件であっても、その内容や経過した年数、物件の状態を総合的に考慮し、適切な売却価格を設定することが重要です。
個別の状況に応じた価格設定をおこなうと、購入者との信頼関係を築きつつ、スムーズな取引を進めることが可能となります。
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心理的瑕疵のある物件を売却する際、売主がもっとも注意すべき点の1つが告知義務です。
告知義務とは、不動産に関する問題や特定の事実を、売却前に買主へ正確に伝える義務を指します。
とくに、心理的瑕疵がある場合、告知義務を適切に履行することが後のトラブルを防ぐためにも重要です。
以下では、心理的瑕疵に関連する告知義務と、違反した場合のリスクについて解説します。
不動産売却において、心理的瑕疵がある物件には、その事実を買主に告知する義務があります。
とくに、死因に事件性がある場合や不自然な死が確認された物件は、買主が心理的な抵抗を感じる可能性が高いため、告知が必要です。
一方、老衰や病死などの自然死は、事件性がないため、通常は告知義務の対象外とされています。
たとえば、入浴中の転倒や食事中の誤嚥による事故死も、通常は告知する必要がないとされています。
しかし、以下のようなケースでは注意が必要です。
自然死であっても、死亡後、長時間経過して発見された場合や、特殊清掃がおこなわれた場合は、告知義務が発生します。
近隣住民にその出来事が知られている場合も、告知義務が生じることがあります。
社会に影響を与える可能性のあるケースについても告知義務が発生するため、注意が必要です。
現行法では、死亡から何日以内であれば告知義務がないという具体的な基準は設けられていません。
そのため、売主としては物件の状態や周囲の状況を十分に把握し、不動産会社へ必要な情報を提供することが重要です。
告知義務を怠った場合、買主が売主を相手取って契約の解除や損害賠償を求める可能性があります。
また、告知義務違反が明らかになると、ほかの買主への売却も困難になり、信頼を失う結果にもつながります。
これにより、売主が法的・経済的な責任を負うリスクが増大するため、適切な情報開示が不可欠です。
告知義務が生じる場合、売主としては「いつまで告知をおこなうべきか」も気になるところでしょう。
国土交通省が2021年に公表した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」によると、事故物件の売買における告知義務の期限は明確にされていません。
そのため、事件や事故が発生してから何年も経っている場合でも、告知が必要です。
とくに、他殺や重大な事件が報道され、広く知られているケースでは、物件が存在する限り、告知をおこなうことが推奨されます。
事件の内容が社会的に強い影響を与えている場合、告知しないとトラブルが発生する可能性が高いためです。
買主に適切に伝えると、信頼関係を維持し、後々のトラブルを避けることができます。
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不動産売却における心理的瑕疵とは、事故物件や周辺環境の問題など、買主が心理的に忌避する状況にあることを指します。
心理的瑕疵がある物件の売却価格は下がる傾向にありますが、価格を決めるときは内容によって個別に判断することが大切です。
心理的瑕疵がある物件の売主は買主への告知義務があり、違反すると契約の解除や損害賠償を求められる可能性があるためご注意ください。