2024-12-03
不動産売却時には、売却で得た利益に対して所得税などが課せられます。
ただし、税金は売却代金そのものに課せられるのではなく、かかった費用を差し引いた利益にかかることが注意点です。
そこで今回は、不動産売却時に費用として計上できる減価償却費とはどのようなものなのか、計算方法と注意点を解説します。
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不動産売却では、売却代金を得るだけでなく、さまざまな費用を計算に入れる必要があります。
減価償却費もこうした費用の一種ですので、その内容をチェックしてみましょう。
不動産の中でも、土地ではなく住宅などの建物部分については、建築後の経過時間とともに劣化が進み、その価値が下がります。
不動産売却をおこなう場合、不動産の購入にかかった費用を経費として計上できますが、劣化により下がった価値についても差し引く必要があります。
この劣化により下がった価値を金額として算出したものが減価償却費です。
不動産売却において減価償却費の計上が必要となるのは、不動産売却による利益にかかる譲渡所得税を正しく計算するためです。
譲渡所得税の計算では、不動産購入費用を経費として計上できますが、新築時の価格をそのまま経費に含めた場合、不動産売却の利益とそれにかかる税額が過少に計算されてしまいます。
実際には、建物は使用年数に応じて劣化が進み、価値が減少しています。
そのため、新築時の価格をそのまま用いるのではなく、劣化による価値の減少分を差し引くことが減価償却費の目的です。
減価償却費について、節税につながる経費だと認識している方がいるかもしれません。
しかし、この認識は事業におけるものであり、自宅として使用していた不動産の売却に関する認識とは異なる点に注意が必要です。
事業における減価償却費は、譲渡所得税の計算に用いられるものではありません。
たとえば、事業で使用する機械などを購入した場合、その費用を購入年に一度で経費計上するのではなく、複数年にわたり少しずつ経費として計上します。
この際に使用されるのが減価償却費であり、資産の価値の劣化分を毎年計上することで、所得と税負担を調整するために必要な経費です。
一方、個人の不動産売却における減価償却費は、譲渡所得税を適正に計算し、過少申告を防ぐために必要な費用です。
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減価償却費が不動産売却でどのような意味を持つかを把握したら、実際に減価償却費の計算方法をチェックしておきましょう。
一般的な計算方法である定額法において、減価償却費は以下の計算式で求められます。
建物部分の取得費×0.9×決められた償却率×経過年数
この計算式における建物部分の取得費とは、建物の購入代金とそれに付随する手数料や税金などを指します。
建物の購入代金を確認するには、売買契約書に記載された金額を確認してください。
売買契約書に土地と建物の金額が分けて記載されている場合、建物の金額のみを使用します。
一方、土地と建物の購入代金が分かれていない場合には、消費税額から建物の価格を計算することが可能です。
消費税は土地には課税されないため、消費税額は建物にのみ適用されます。
不動産購入当時の消費税率と現在の税率が異なる可能性があるため、購入時の税率を確認することが必要です。
また、売買契約書に建物の金額や消費税の記載がない場合、標準建築単価を用いて計算する方法があります。
さらに、固定資産税評価額を基に建物の購入代金を計算する方法も可能です。
減価償却費の計算式で「0.9」をかけるのは、法定耐用年数を経過した後も残存価値を取得価額の10%と見なして計算するためです。
償却率は建物の材質や構造により異なり、木造では0.031、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造では0.015が適用されます。
経過年数は、不動産購入から売却までの期間を指し、6か月未満は切り捨て、6か月以上は切り上げて計算します。
確定申告が必要かどうかを確認するには、譲渡所得金額を計算します。
不動産売却で得た譲渡所得がゼロまたはマイナスの場合、譲渡所得税は発生せず、確定申告の必要はありません。
一方、譲渡所得がプラスの場合には、「譲渡所得×譲渡所得税率」で譲渡所得税の金額を計算し、確定申告をおこなう必要があります。
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不動産売却における減価償却費の内容と計算方法を把握したら、注意点についてもチェックしましょう。
不動産の購入代金や購入時にかかった手数料が分からない場合、概算取得費の特例を利用して計算することができます。
概算取得費の特例とは、不動産購入から長期間が経過しているなどの理由で取得費が不明な場合に、売却金額の5%を取得費として計算する方法です。
とくに、先祖から相続した不動産などでは、実際の取得費を特定することが困難な場合があります。
取得費が分からない場合でも確定申告を放置せず、売却金額の5%を概算取得費として計算しましょう。
なお、この概算取得費は、実際の取得費が売却金額の5%を下回る場合でも使用できます。
ただし、概算取得費の特例を利用する場合、購入時にかかった手数料を取得費から差し引くことはできません。
実際の取得費を用いて手数料を差し引くか、概算取得費の特例を利用するか、どちらかを選択する必要があります。
不動産売却で赤字が発生しても、確定申告をおこなう場合があります。
不動産売却で得た代金と、不動産取得にかかった費用を比べ、売却で得た代金が少なければ、利益ではなく譲渡損失が発生します。
譲渡損失とは、不動産売却における赤字を意味し、譲渡所得は発生せず、譲渡所得税も発生しません。
しかし、不動産の譲渡損失が発生した場合には、ほかの不動産の譲渡所得のプラス分から控除できます。
また、ほかの不動産の譲渡所得から譲渡損失を差し引いても譲渡損失が残る場合には、一定の条件を満たす場合に、給与所得や事業所得といった他の所得と損益通算が可能です。
確定申告の手続きにより、給与所得や事業所得と損益通算をおこなうと、これらの所得にかかる所得税の節税につながります。
損益通算が可能となる条件として挙げられるのは、譲渡した年の元日時点での所有期間が5年を超える不動産の売却を指す「長期譲渡所得」をおこなった場合です。
さらに、1回の損益通算でマイナスを相殺しきれない場合には、譲渡の翌年以降3年にわたり繰り越して控除することが可能です。
不動産購入時にかかった経費である取得費には、不動産の購入代金以外にもさまざまな種類の費用が含まれます。
具体的には、不動産購入時に支払った仲介手数料、登録免許税、司法書士への報酬が取得費に該当します。
また、不動産取得税や売買契約書にかかる印紙税、不動産購入時に精算した固定資産税も取得費として計上することが可能です。
さらに、住宅ローンにかかる事務手数料なども取得費に含めることが可能です。
くわえて、建物についてはリフォーム費用も取得費として計上できます。
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不動産売却における減価償却費とは、確定申告で経年劣化し下がった建物の価値を経費から差し引くための費用です。
定額法における減価償却費の計算は「建物部分の取得費×0.9×決められた償却率×経過年数」で計算できます。
不動産購入代金が不明な場合は概算取得費の特例を利用することと、長期譲渡所得であれば譲渡損失が発生した場合に損益通算が可能になることは注意点です。